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vol.5 ドライシステム厨房とは

1998/06/19 アーテック倶楽部ニュース

連載★ HACCPこわい!?食品安全再点検★
5/29号で、せっかく「2次汚染」の話が出ましたので、もう少し続けましょう。

朝日新聞の記事(1998年1月8日朝刊)で、「調理室の高温多湿状態をあらためるために、調理室に水をまかなくてもいいようにする改修にも継続的に取り組み…方針だ。」とあります。これは文字通り「ドライシステム厨房推進」を意味しています。
でも、欧米のHACCPの文献の中に「ドライシステム厨房推進」は存在しません。
私が昨年オーストラリアで見学してきたHACCPを90%まで完成させたという調理室も床は濡れていました。なぜ?どうして?。
「HACCPこわい!vol.1」でお話ししたと思いますが、HACCPとは食中毒を防止するための体制を作る「考え方」です。
日本では、正確に言うと日本の「厚生省」や「文部省」では、HACCPをベースにして1997年の春に、それぞれ「大量調理施設衛生管理マニュアル」と「学校給食衛生管理の基準」を作成、通知し、そのなかで「ドライシステム厨房推進」を明記しています。
察しの良い方はすでにお解りでしょう。そうです「ドライシステム厨房」は、HACCPをベースに考えた上で「2次汚染」を防止するために「厚生省」や「文部省」が選択した調理室の基礎環境なのです。
「厚生省」のマニュアルが「WHO:世界保健機関」から高い評価を得ているのは、HACCPの考え方をベースにして安全に対する指示や環境作りが、より具体的に細かく表現されているところにあります。
何度もお話しするようにHACCPは「考え方」。丸暗記する規則では無いのです。

うっすらとHACCPへの入り口が見えてきませんか?

次は服部工業(株)製の新製品「ドライケトル」のお話です。

「ドライケトル」は厚生省が1997年3月24日に発表した「大量調理施設衛生管理マニュアル」に従って設計された日本初の二次汚染防止用ガス煮炊釜です。
先ず、設計の根拠となったマニュアルの条文を紹介しましょう。
以下《(監) 重要管理事項/3.二次汚染の防止/(9)》より抜粋。
『食品並びに移動性の器具及び容器の取り扱いは、床面からの跳ね水等による汚染を防止するため、床面から60cm以上の場所で行うこと。ただし、跳ね水からの直接汚染が防止できる食缶等で食品を取り扱う場合には、30cm以上の台にのせて行うこと。』以上、非常に明快な条文ですので、特に解説の必要は無いでしょう。
問題は、この条文が世に出た時点で、日本国内にこの条件を満たす煮炊釜が存在しなかったことです。
従来、学校給食で多く使われていた煮炊釜は、作業性を重んじて作られた結果として調理物を取り出すために釜を90度前方に傾けますと釜の縁から床までの距離は10cm以下という状態でした。幸いなことに、かつて煮炊釜で調理したものによって深刻な食中毒事件が発生した例がほとんど報告されていませんが、このことは煮炊釜で調理されたものの多くが最終調理段階で100℃付近にあり、食中毒菌が死滅する条件にあっていたことが考えられます。

6/26号につづく