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vol.12 次亜塩素酸ナトリウム消毒とは!その2

1998/09/25 アーテック倶楽部ニュース

連載★ HACCPこわい!?食品安全再点検★
「次亜塩素酸ナトリウムによる消毒」のつづきです。

金属に対しての次亜塩素酸ナトリウムは(一応消毒できるが)その含有する塩素が金属の酸化・腐食を促進してしまうので使用しないこと、付着したら水でよくすすぐことが大切です。次亜塩素酸ナトリウムが光と熱に弱い、つまり、大変不安定な化合物であることは前出の通りですが、実は次亜塩素酸ナトリウムそのものに消毒力はありません。水で一定の濃度に薄めた時に遊離する遊離有効塩素が、細菌体の酵素を破壊してはじめて細菌を殺すのです
ですから、どのくらい水を入れるかが非常に大切で、これを間違えて薄めすぎますと殺菌したつもりが、水に漬けただけと同じになったり、濃すぎて手が荒れたり、ふきんがボロボロになったりしますので、その濃度のコントロール方法をしっかりマスターしておくことが大切です。
もう一つ、水温も殺菌力に大きく関係してきます。殺菌作用は化学反応であり、一般に温度が高いほど殺菌力は強くなり、温度が低くなるほど殺菌力は弱くなります。次亜塩素酸ナトリウムの場合もそれは顕著であり、有効塩素200PPM(下記「注:2」参照)の濃度で水温30℃の時なら大腸菌を30秒で殺せますが、水温20℃なら1分、水温10℃なら2分、水温5℃なら5分もかかります。これ、ポイントですよね。
「注:2」◎PPM:(ピーピーエム)と読む。PART PAR MILLION(百万分率)の略で河川の汚染などを表わす時に用いる。200PPMなら1リットル中に0.2gの含有を示すことになります。
(参考文献:食品衛生早わかり/牧野権一著/柴田書店刊)(参考文献:食品衛生/1997年11月号/社団法人日本食品衛生協会刊)「次亜塩素酸ナトリウムによる消毒:その注意点」
「HACCP」の文献を読んだ時に、最初から私は決定的な理解違いをしておりました。
それは、「衛生と清潔は違う。見かけがきれい(清潔)であっても、そこに目に見えない食中毒菌が存在したならば、衛生的とは言えない。」という言葉を「つまり表面が汚くても食中毒菌が存在しなければ衛生的なのだな。洗浄よりも消毒にポイントを置いて衛生管理すれば良いのであって、見かけのきれいさなんて食品衛生上、全く意味の無いことなのだ。」と理解したところにあります。
そのことが間違いであったことを今日解説します。
よく厨房現場で、「次亜塩素酸ナトリウムで樹脂まな板の黄ばみが落ちない。そろそろ新しい樹脂まな板に替えなければいけないなあ。」という声を聞きます。これは、樹脂まな板が古くなってきて変色してきたと思われがちなのですが、実は違います。まな板の表面に肉片、血液、脂肪、でんぷんなどの有機物が付着しており、それら有機物に遊離有効塩素が反応して消費されてしまって殺菌力・漂白力が低下している状態で、危険な二次汚染の前段階なのです。
つまり、消毒前の洗浄が不十分なために発生している事例なのです。もう一つ。洗面器に次亜塩素酸ナトリウム液を入れ、手指を消毒している例。これも、手指に付着している汗(脂)や汚れなどに含まれる有機物に遊離有効塩素が反応して消費されてしまうため、多くの人が手を浸すことによって殺菌力は低下してしまい、二次汚染の要因となります。

10/9号につづく