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vol.14 逆性せっけんの消毒とは

1998/10/23 アーテック倶楽部ニュース

連載★ HACCPこわい!?食品安全再点検★
今日は「逆性せっけんによる消毒」の解説です。
これ、汚れを落とすことのできない「せっけん」だって知っていました?

「逆性せっけんによる消毒 」
「逆性せっけん」が何故「逆性」とよばれるのか?。
それは、「普通せっけん」の泡立ち性(界面活性力)を示す部分が陰イオンであるのに対して「逆性せっけん」は陽イオンであることに起因します。市販されている「逆性せっけん」は純分10%液で、匂いも色も味もほとんど無い、しかも殺菌力の強い優れた殺菌剤です。
その原液は、熱や光に対しても安定しており「次亜塩素酸ナトリウム」のように放置しておくと効果が薄れて行くという心配もありません。ただし、「せっけん」という呼び名でありながら汚れを落とすことはできません。また、殺菌力は素晴らしいのですが、毒性を持っているため「次亜塩素酸ナトリウム」のように食品添加物に指定されておりませんので、食品(野菜・果物)の消毒には使用できませんし、直接人の口に入る食物に密着して使われるまな板など、他の消毒方法が可能なものは避けたほうが良いでしょう。
前出のように、匂いが無く殺菌力が強いので手指の消毒に特に適しています。ほかに、煮沸消毒のできない器具や冷蔵庫の消毒、調理機器、金属製の戸棚、カウンター、包丁の消毒など、匂いがついたり、錆びたりする恐れのあるものに使用することができます。
「次亜塩素酸ナトリウム」の使えないもの、場所に向いている、と言えば的確かも知れません。

以下に使用例を示します。
逆性せっけんの使用例

消毒用途希釈濃度時間及び注意事項
手指原液5~6滴原液を30秒以上、万遍なく手指にこすり込む。
冷蔵庫50倍液冷蔵庫専用ふきんに浸して軽く絞り、庫内を隈なく拭く。
食器戸棚50倍液冷蔵庫専用ふきんに浸して軽く絞り、戸棚内を隈なく拭く。
調理器具200倍液5分以上浸漬、後、流水でしっかりすすぎ、毒性を除く。
ふきん・タオル200倍液5分以上浸漬、後、流水でしっかりすすぎ、毒性を除く

「逆性せっけん」も使用上の注意点を厳守することが必要です。
中でも大切なのは、「次亜塩素酸ナトリウム」と同じく、使用する前によく洗浄することです。「逆性せっけん」は汚れがありますとそれと結合して殺菌力が低下してしまいます。また、油が付着しているものには、液が染み込まなくなるため、殺菌が不完全になります。
もう一つ、洗浄後の「普通せっけん」の洗い流しも「逆性せっけん」を使う上では特に大切です。「普通せっけん」の陰イオンと「逆性せっけん」の陽イオンが相互に作用して殺菌力が消失してしまうからです。よって、洗浄力を補うために「普通せっけん」 と混ぜて使用することなども避けなければなりません。

(参考文献:食品衛生早わかり/牧野権一著/柴田書店刊)

(参考文献:食品衛生/1997年11月号/社団法人日本食品衛生協会刊)

「洗浄」はここでも大切でした。

次回は「消毒用アルコールによる消毒」を取り上げる予定です。

11/13号につづく